古川あいかの作品は、見るものを惹きつけ、永続する余韻を残す。 衣類や布などの日常のモチーフを捉えながらも、そのモチーフが大量に天空に吸い込まれるような作品、また同心円状に描かれたイメージ。 人々が毎日飽くことなく着替えることで入替る衣類、それらは古川の組み換え作業で、非日常の世界となり、さわやかな刺激を創出する。
古川は「ふと日常の中から訴えてくるような何かの感覚」「無意識的な習性」を意識化することで、日常のものが日常のもので無くなり、その一瞬に興味を注がれるという。 また、人々の生活は、「繰り返されているのに重ならない」行為であり、それを渦巻きに例えて表現している古川の手法にも、他に類がなく、輝く個性を感じさせる。
アーティスト・イン・レジデンスを経験したライプツィヒに再び文化庁派遣される古川の新作群は、古川の決意宣言であり、今後の飛躍を保証するに足る力作揃いである。 五十嵐卓 / 損保ジャパン東郷青児美術館キュレーター |